第17回 会社訪問とコンピュータ名人

 さて、おしぼり総経理と訪問したのは、日系のオーディオ・ヘッドを製造している会社でした。オーディオ・ヘッドと言っても分からないと思いますが、録音テープの磁気ヘッドの部分で、カセット・テープがこの磁気ヘッドを通過する度に、磁気化されて録音されるという製品です。

 この会社ではこの製品を作るために、1000人もの女工が組立ラインで働いておりました。10代後半から20代の女性が1000人、並んで作業しているところを見るのは圧巻でした。工場見学をさせてもらったのですが、芥子粒ほどの小さな部品をピンセットで器用につまんで素早く組立てるのは、我々おじん族には想像もつきません。話によると、2、3年で目を悪くして辞めてしまうそうです。辞めても心配ご無用。工場の門前に募集の貼り紙を出せば、いくらでも次の働き手が並ぶといっておりました。

 そこに二人の日本人管理者がおりました。一人は工場長で顎から一面に山羊ひげを生やしておりますが、頭のほうは対照的に後退をしており、上の部分が下に回ったようでした。そしてもう一人が、技術部長でありコンピュータ名人だったのです。

 初めて訪問した会社ですし、プレスのこともさっぱり分かりませんので、どのように話を切り出せばいいのか分からず、おしぼり総経理の横にぽつねんと坐っておりました。何も話さないわけにもいかず、コンピュータの話題を持ち出したのです。そうすると、今まで山羊ひげ工場長とは対照的に黙ってタバコをくゆらしていた技術部長が俄然、話をしだしたのです。

 私はコンピュータを買いたいのですが、日本語のソフトが手に入らないものだから困っているんですよと話したら、そんなのは簡単、私が全部インストールしてあげます。じゃ、コンピュータはどこで買えばと聞くと、中国では、このマザーボードはどこそこの有名ブランドだから○○元するとか言って人を騙すから、一般の店は信用できない。私が全ての部品を買って組立ててあげますよと言ってくれました。中国では人を騙すのがあたりまえ、騙される奴がバカということですので、信用できない。信用して買ったら、すぐに壊れてだめになってしまうとのことでした。

 これは有難かった。懸案の日本語ソフトの問題が、こんな形でお客さんのところで解決するとは思ってもいませんでした。早速、その技術部長にお願いをすることにしました。これが縁で、この山羊ひげ工場長と、技術部長とは親しくおつきあいをすることになりました。中国に来て最初に知り合った日本の方が、このお二人でした。

 この技術部長は本当にコンピュータ名人でした。ちょうどウィンドーズ 98が発売されてすぐだったのですが、日本語版と中国語版の両方をインストールしてくれることになりました。ウィンドーズ 95では、両方をインストールすることはできなかったのですが、98ですと簡単な切替えだけで両方が使えるのです。私が使わないときは、一般の中国人ワーカーが中国語版として使えるのです。また、一太郎やその他のいろいろなソフトも入れてくれました。技術部長ですので、自分で図面を引いたりしますが、その図面用ソフトもつけてくれました。結局、このソフトは宝の持ち腐れで、一度も使うことはありませんでした。

 更に、日本語版ウィンドーズ上で、中国語の簡体字が打てるソフトも入れてくれました。これは重宝しました。中国語には日本の漢字にはない漢字がたくさんあります。深センのセンは、土に川の組合せなのですが、日本の漢字にはありません。これが打てるのは、本当に役に立ちました。これらソフトは、この技術部長が自分で買い集めたもので、値段はとても高いものになります。本当に有難かったです。

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